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ブランド共感の法則

FLICKモデル®

 従来の消費行動モデルは、「認知から購買まで」を促すものでした。しかし、買っていただいたあとも、ブランドが長く愛され続けるか、という問いには十分に答えてきませんでした。ブランドが長く愛され続けるためには、効率で語ることは難しく、心に目を向けなくてはなりません。

 これを親友や夫婦関係に例えると、初対面で「気が合う」と感じ、「もっと一緒にいたい」と思い、「一緒にいて飽きない」と感じ、「この人は頼れる」と信頼を寄せ、やがて「身内のようなかけがえのない存在」へと変化します。この流れを整理すると、共感→愛着→刺激→心配り→身内感覚の5つの流れが見えてきます。ブランドと生活者においても、同じ経路をたどることに気付き、アングルシフト®のブランド共感の法則「FLICKモデル®」が誕生しました。

 長く愛され続けるブランドには、Feeling(共感)、Love(愛着)、Inspire(刺激)、Care(心配り)、Kinship(身内感覚) の5つの流れがあり、この一連のサイクルを繰り返します。共感し意気投合するうちに、愛着が芽生えます。しかし、愛着をそのままにすれば、関係性はマンネリとなり停滞します。そこに刺激があると、愛着はさらに深まります。ところが、付き合いが長くなればなるほど、小さな不満が蓄積していきます。相手の心の変化に気づき、親身にケアすることで、絆が深まり育まれていきます。絆はやがて強固なものとなり、「うち」という身内感覚が育まれていきます。この5段階を一つのサイクルとして繰り返すうちに、ブランドロンジェビティ(ブランドが長く愛され続ける力)が強化され、ブランドの寿命が長く続く状態へと変わります。

 マーケティング戦略は、いかに市場で有利に戦うかに主眼が置かれがちですが、一時的に市場シェアを得ても、10年後、20年後はどうなるかわかりません。こうして考えると、短期視点と同時に長期視点の重要性が見えてきます。今、愛してくださるお客様一人ひとりを大切にし、10年、20年と、いかに長く愛され続けるかに視点を移し、ブランド戦略を考えるべき時かもしれません。ライフタイムバリュー(LTV)とは、このような考えが根底にある言葉であると考えます。

 

1. Feeling(共感)

 FLICKモデル®の第一段階である「Feeling」は、生活者の心に、小さな気づきを起こす接点を指します。これは、ブランドが、生活者と初めて感情的なつながりを持つファーストステップです。従来の消費行動モデルではインパクトが重視されがちでしたが、FLICKモデルの「Feeling」では共感から始まります。動画広告や駅のポスターを目にする、友だちとの会話で知る、SNSの投稿で記事を目にする、お店で何気なく商品を手に取る。いずれも、ふとした瞬間に、ちょっとしたきっかけから心にすべり込み、「このブランド、自分のことをわかってくれている」「なんかいいかも」と感じられることがポイントです。押しつけがましくない自然なアプローチと、生活者の気持ちに寄り添うブランド姿勢が大切です。これまで「知らなかったブランド」が「気になる存在」に変わる第一歩が「共感」です。

 

2. Love(愛着)

 第二段階の「Love」は、生活者に、このブランドから「元気をもらえる」「好き」「お気に入り」「ずっと一緒にいたい」という強い愛着の感情をかき立てる段階です。ブランドの個性やセンス、ストーリーが、生活者の心に入り込み、何かをきっかけに愛着が深まり「ずっと一緒にいたい」という感情が湧き起こります。顧客はブランドを「便利で都合のいい存在」ではなく「自分のライフスタイルの一部」と感じ始め、ブランドが生活者にとって「特別な存在」に変わる瞬間が第二段階です。愛着のポイントは、かっこいい、かわいい、心が落ち着く、センスよく見える、今っぽさがある、など、個々の嗜好にジャストフィットする点が挙げられます。ブランドの思想やビジョン、商品の佇まいやこだわり、色やカタチ、ブランドの誕生秘話のストーリー、ロゴやデザインセンスなど、その魅力は細部に宿ります。ブランドに込められた魂が、生活者の心の奥底に伝わることがポイントと言えます。

 

3. Inspire(刺激)

 「Inspire」は、消費者がブランドの世界観に夢中になり没頭する段階です。第二段階で、愛着を持ってくれた人たちも、時間と共に、その熱は徐々に冷め、やがて関係性は薄れていきます。そうならないために、適度な刺激が必要になります。好奇心を刺激する体験機会や新たな話題を振りまいて、顧客が、ブランドの新たな一面に気づいたり、新鮮な話題を投げかけて、一緒にいて楽しくて仕方ないと感じる状態を作り出します。話題をもたらし、ブランドの世界観にますますのめり込む工夫があるなど、時を忘れさせるような「夢中」をもたらすことがポイントです。ブランドが生活者にとって「特別な存在」であり続けるために、適度な刺激によって、マンネリを打破し、ますますハマる(沼る)感覚をもたらしブランドの鮮度を維持します。

4. Care(心配り)

 「Care」は、ブランドが小さな気遣いを示して、顧客の心を満たす段階です。ここでは、ブランドが顧客に、真心を伝え気遣いを示し、さらなる深い充足感を与え、強固な絆を構築していきます。例えば、カスタマーサポートでクレーム対応の場面など、お客様が不安を抱きそうな瞬間にブランドの真摯な姿勢が伝わると、それまで不満を抱いていたお客様も一転して熱烈なファンへ切り替わることがあります。不具合が起こりそうな時期を察してメンテナンスや次の買替えへとさりげなく誘導したり、「Care」の段階は、顧客が「このブランドは私のことを本当に考えてくれる」「人生に寄り添ってくれている」と感じられることがポイントです。この段階では、顧客はブランドに深い信頼を寄せ、いっそう強固な絆で結ばれ、長期的な関係に発展するきっかけが生まれる段階です。

5. Kinship(身内感覚)

 「Kinship」は、ブランドと消費者、さらには消費者同士がつながり共感が連鎖する段階です。ここでは、ブランドは発信者ではなく、ファン同士の絆や互助の精神を育み、ブランドも顧客も同じ家族のような身内感覚が芽生えます。ファンは自らSNSでブランドを話題にしたり、友達に勧めたりすることで、共感の連鎖が巻き起こります。生活者はブランドに対して身内感覚が芽生え、コミュニティが生まれたり、顧客同士が自然に繋がったり、絆を育む段階がこれにあたります。強い仲間意識が原動力となり、このブランドがなくなって欲しくないという意識が、仲間意識や身内感覚を長く支えます。公式コミュニティのほか、ファン同士の繋がりが自然発生していく動きなども、ブランドの将来の方向性を考える上で重要な現象といえます。

FLICKモデルの三大特徴

アングルシフト®のFLICKモデル®には、大きく3つの特徴があります。

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① 5つの軸による共感構造

  F・L・I・C・Kの5項目によって共感構造を多層的に捉えている点。

② 異なるブランドを横断比較

   分野や市場が異なるブランドを、同一基準で横断して比較できる点。

③ ブランドの生存力の把握

  ブランドが長く生き続けるための課題と方向性が把握できる点。

 FLICKモデル®は、ブランドと生活者を、売り手と買い手の関係から、仲間意識、身内感覚へと変えるブランド共感の法則です。Feelingで心を動かし、Loveで愛着を深め、Inspireで話題が再燃し、Careで心に寄り添い、Kinshipで身内感覚を深めていきます。FLICKモデル®は、ブランドが長く愛され続ける力(ブランドロンジェビティ)の把握に役立つフレームです。

2025.10.26初稿

2025.12.26更新

2026.1.15​更新​

2026.5.23更新

2026.6.4更新

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