

目の前に同じような商品がいくつも並んでいるとき、あなたはどれを選ぶでしょうか。
「あれではなく、これにしよう」とサッと手を伸ばす瞬間、無意識に作用するのがブランド力です。商品やサービスがあふれる現代において、人は特定の商品やサービスを「お気に入り」として認識します。その人にとって、ひときわ輝く存在として映るのがブランドです。
人に愛情を寄せるのと同じように、人は物やサービスに対しても特別な感情を抱きます。共感はトライアルを生み、 愛着はリピート購入を促し、やがて身内感覚は指名買いや応援買いへとつながります。
このようなブランドと顧客の関係性の深まりを、Feeling(共感)→Love(愛着)→Inspire(刺激)→Care(心配り)→Kinship(身内感覚)の5段階で捉えたのが、アングルシフト®の『FLICKモデル®』です。
FLICKモデル®は、認知から購買、そして購買後の顧客との関係をどのように育み、長く愛されるブランドへと成長させていくかを示す実践モデルです。ブランドは、商品やサービスを超えて、顧客との間に感情的なつながりを築きます。そして、そのつながりが深まるほど、ブランドは選ばれ続ける存在になっていきます。
ブランドロンジェビティ(ブランドの長寿性)を提唱するアングルシフト®は、ブランドが市場シェア中心の発想からライフタイムバリュー(LTV:顧客生涯価値)重視へと視点を転換し、顧客との長期的な関係を育むための実践モデルとしてFLICKモデルの普及に取り組んでいます。
FLICKモデル®の背景
従来のマーケティング(消費行動モデル)は、主に「認知から購買まで」の一方向的な流れを表すものでした。そのため、宣伝効果や短期的な売上効果は説明できても、ブランドと顧客との長期的な関係性は十分に捉えきることができませんでした。ブランドの「今」の実態は、ブランドと生活者との心のつながりや、感情の移ろいに目を向けなければ、本質的な価値は見えてきません。
たとえば、人間関係では、小さなきっかけから「なんかいい」と好意を抱き、やがて愛着が生まれます。そして、相手の意外な一面や心の奥底に触れるなど数々の経験を経て愛着は深まり、トラブルや小さな不満が生じても、誠実な態度や心配りの行動の積み重ねによって絆はさらに強固なものとなっていきます。やがて「うち」という身内感覚が芽生え、かけがえのない存在へと変化していきます。
こうした心の動きを体系的に整理した結果、共感→愛着→刺激→心配り→身内感覚の5段階が浮き彫りとなり、ブランドと顧客との関係においても同様の経路をたどることに着目し、企画士・木田広大による『FLICKモデル®』が生まれました。
支持されるブランドは、Feeling(共感)→Love(愛着)→Inspire(刺激)→Care(心配り)→Kinship(身内感覚)の5段階が共通しており、これらがらせん状に循環しながら繰り返すことが大きな特徴です。感情の移ろいを軸に顧客との関係性を継続的に評価・育てるための実践的な枠組みとしてブランドのライフタイムバリュー(LTV)を捉えます。


FLICKモデル®の5段階
1. Feeling(共感)
FLICKモデル®の第一段階である「Feeling」は、生活者の心に、小さな気づきを起こす接点を指します。これは、ブランドが、生活者と初めて感情的なつながりを持つファーストステップです。従来の消費行動モデルではインパクトが重視されがちでしたが、FLICKモデルの「Feeling」では共感から始まります。動画広告や駅のポスターを目にする、友だちとの会話で知る、SNSの投稿で記事を目にする、お店で何気なく商品を手に取る。いずれも、ふとした瞬間に、ちょっとしたきっかけから心にすべり込み、「このブランド、自分のことをわかってくれている」「なんかいいかも」と感じられることがポイントです。押しつけがましくない自然なアプローチと、生活者の気持ちに寄り添うブランド姿勢が大切です。これまで「知らなかったブランド」が「気になる存在」に変わる第一歩が「共感」です。
2. Love(愛着)
第二段階の「Love」は、生活者に、このブランドから「元気をもらえる」「好き」「お気に入り」「ずっと一緒にいたい」という強い愛着の感情をかき立てる段階です。ブランドの個性やセンス、ストーリーが、生活者の心に入り込み、何かをきっかけに愛着が深まり「ずっと一緒にいたい」という感情が湧き起こります。顧客はブランドを「便利で都合のいい存在」ではなく「自分のライフスタイルの一部」と感じ始め、ブランドが生活者にとって「特別な存在」に変わる瞬間が第二段階です。愛着のポイントは、かっこいい、かわいい、心が落ち着く、センスよく見える、今っぽさがある、など、個々の嗜好にジャストフィットする点が挙げられます。ブランドの思想やビジョン、商品の佇まいやこだわり、色やカタチ、ブランドの誕生秘話のストーリー、ロゴやデザインセンスなど、その魅力は細部に宿ります。ブランドに込められた魂が、生活者の心の奥底に伝わることがポイントと言えます。
3. Inspire(刺激)
「Inspire」は、消費者がブランドの世界観に夢中になり没頭する段階です。第二段階で、愛着を持ってくれた人たちも、時間と共に、その熱は徐々に冷め、やがて関係性は薄れていきます。そうならないために、適度な刺激が必要になります。好奇心を刺激する体験機会や新たな話題を振りまいて、顧客が、ブランドの新たな一面に気づいたり、新鮮な話題を投げかけて、一緒にいて楽しくて仕方ないと感じる状態を作り出します。話題をもたらし、ブランドの世界観にますますのめり込む工夫があるなど、時を忘れさせるような「夢中」をもたらすことがポイントです。ブランドが生活者にとって「特別な存在」であり続けるために、適度な刺激によって、マンネリを打破し、ますますハマる(沼る)感覚をもたらしブランドの鮮度を維持します。
4. Care(心配り)
「Care」は、ブランドが小さな気遣いを示して、顧客の心を満たす段階です。ここでは、ブランドが顧客に、真心を伝え気遣いを示し、さらなる深い充足感を与え、強固な絆を構築していきます。例えば、カスタマーサポートでクレーム対応の場面など、お客様が不安を抱きそうな瞬間にブランドの真摯な姿勢が伝わると、それまで不満を抱いていたお客様も一転して熱烈なファンへ切り替わることがあります。不具合が起こりそうな時期を察してメンテナンスや次の買替えへとさりげなく誘導したり、「Care」の段階は、顧客が「このブランドは私のことを本当に考えてくれる」「人生に寄り添ってくれている」と感じられることがポイントです。この段階では、顧客はブランドに深い信頼を寄せ、いっそう強固な絆で結ばれ、長期的な関係に発展するきっかけが生まれる段階です。
5. Kinship(身内感覚)
「Kinship」は、ブランドと消費者、さらには消費者同士がつながり共感が連鎖する段階です。ここでは、ブランドは発信者ではなく、ファン同士の絆や互助の精神を育み、ブランドも顧客も同じ家族のような身内感覚が芽生えます。ファンは自らSNSでブランドを話題にしたり、友達に勧めたりすることで、共感の連鎖が巻き起こります。生活者はブランドに対して身内感覚が芽生え、コミュニティが生まれたり、顧客同士が自然に繋がったり、絆を育む段階がこれにあたります。強い仲間意識が原動力となり、このブランドがなくなって欲しくないという意識が、仲間意識や身内感覚を長く支えます。公式コミュニティのほか、ファン同士の繋がりが自然発生していく動きなども、ブランドの将来の方向性を考える上で重要な現象といえます。
2025.10.26初稿
2025.12.26更新
2026.1.15更新
2026.5.23更新
2026.6.7更新
