F-L-I-C-Kモデル
ブランド共感の法則
α(アルファ)世代時代のブランドコミュニケーション
現代のブランドコミュニケーションは、商品の売り・買いを超え、消費者との深い信頼と共感に基づく関係構築が求められる時代へと進化しています。
「憧れ」を創るマスマーケティング時代にはテレビCMをはじめとするマス広告の大量出稿で理想のイメージを押し出し、「ファン」の囲い込みマーケティング時代ではソーシャルメディアを通じて継続的な情報発信でファンを維持しようとしました。
しかし、これらの手法は、いずれも企業側の負担(予算と労力 等)が大きく、これを長く持続するには限界が見えてきました。そこで登場したのが、F-L-I-C-Kモデルです。サステナブル(持続可能な)関係を重視するブランドの「共感の法則」として、Feeling(いい感じ)、Love(愛着)、Inspire(刺激)、Care(心配り)、Kinship(仲間意識) の5つのステップで、ブランドと顧客のつながりを長期に構築すること(LTV)に主眼を置いたモデルです。
1. Feeling(いい感じ):共感の第一歩
F-L-I-C-Kモデルの第一段階である「Feeling」は、生活者の心に、小さな気づきを起こす接点を指します。これは、ブランドが、生活者と初めて感情的なつながりを持つファーストステップです。従来の消費行動モデル「AIDMA」における「Attention(注目)」の段階では、視覚的なインパクトが重視されがちでしたが、F-L-I-C-Kモデルの「Feeling」では、共感(あるいは親近感)から始まります。ちょっとした気遣いを示すことで優しく心に入り込み、「このブランド、なんか分かってくれている」と感じていただくことがポイント。押しつけがましくない自然なアプローチと、生活者の気持ちに寄り添う姿勢が大切です。「知らなかったブランド」「関心が無かったブランド」が「気になる存在」に変わる第一歩です。
2. Love(愛着):ときめきと愛着の醸成
第二段階の「Love」は、生活者にときめきや「このブランドと一緒にいたい」という強い感情をかき立てる段階です。ブランドの個性やセンス、ストーリーが、生活者の心に入り込み、「このブランド、好き」という感情が芽生え、「ずっと一緒にいたい」という愛着心が湧き起こります。顧客はブランドを「使い勝手のいい商品」ではなく「自分のライフスタイルの一部」と感じ始め、ブランドが生活者にとって「特別な存在」に変わる瞬間が第二段階です。
3. Inspire(刺激):夢中と没頭の体験
「Inspire」は、消費者がブランドの世界観に夢中になり没頭する段階です。しかし、顧客を放置してしまうと、いずれ関係が薄れてしまいます。このため、適度な刺激が必要になってきます。好奇心を刺激する体験機会や新たな話題を振りまいて、顧客が「一緒にいて楽しくて仕方ない」と感じる状態を作り出します。感情的な没入感を重視し、ブランドの世界観に没頭し、時を忘れるほどの楽しさが湧き起こる経験が重要です。「Inspire」は、ブランドが生活者にとって「特別な存在」であり続けるために、適度な刺激によって、ますますハマる(沼る)感覚をもたらします。
4. Care(心配り):小さな気遣いと心の充足
「Care」は、ブランドが小さな気遣いを示して、顧客の心を満たす段階です。ここでは、ブランドが顧客に、真心を伝え気遣いを示し、さらなる深い充足感を与え、強固な絆を構築していきます。「Care」は、顧客満足を超え、顧客が「このブランドは私のことを本当に考えてくれる」「人生に寄り添ってくれている」と感じる瞬間があることがポイントです。この段階では、顧客はブランドに深い信頼を寄せ、いっそう強固な絆で結ばれ長期的な関係が築かれるきっかけになります。
5. Kinship(仲間意識):共感の連鎖とコミュニティ
「Kinship」は、ブランドと消費者、さらには消費者同士がつながり共感が連鎖する段階です。ここでは、ブランドは発信者ではなく、ファン同士の絆や互助の精神を育み、ブランドも顧客も同じ仲間のような関係が始まります。ファンが自らSNSでブランドを広めたり、友達に勧めたりすることで共感の連鎖が巻き起こります。アイドルとファンとの関係ではなく、アイドルもファンも同じ仲間となって応援し合うコミュニティを形成する段階がこれにあたります。強い仲間意識がファンからファンへと自然に広がり、「この環境がなくなって欲しくない」意識が、コミュニティ維持を長く持続させます。
F-L-I-C-Kモデルの特徴
F-L-I-C-Kモデルは、「ブランド共感の法則」を体現するα(アルファ)世代時代のブランド共感の法則です。
以下の特徴が、その価値を際立たせます:
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キャッチーな響き:カタカナで「フリック」と読み、スマホのフリック操作を連想させ、現代的でα(アルファ)世代に響くフレーズ。
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感情の流れ:「Feeling」から「Kinship」まで、心の動きをスムーズにつなぐストーリー。「売り・買い」を重視した「消費行動モデル」ではなく、「感情と共感」を重視した新しいモデルです。
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持続可能性:一過性の広告発信ではなく、絆づくりによる長期的関係づくり。マーケティング手法の進化版。
結論
F-L-I-C-Kモデルは、ブランドと生活者を売り手・買い手の関係から仲間意識へと変える、ブランド共感の法則です。Feelingで心を動かし、Loveで愛着を深め、Inspireで夢中にさせ、Careで心に寄り添い、Kinshipで仲間意識を広めていきます。F-L-I-C-Kモデルは、α(アルファ)世代時代のブランド共感の法則として、統合コミュニケーション(広報、広告宣伝、販促、デジタル、SNS等)の新たな概念となることでしょう。
2025.10.26 ANGLESHIFT

