FLICK分析
市場考察
フードデリバリー
出前館 VS Uber Eats
1. マーケティング戦略の比較
フードデリバリー市場の2強といわれる出前館とUber Eatsが、世の中に登場した時のマーケティング戦略の違いを比較しました。出前館はテレビCMによるマスマーケティング手法、Uber Eatsは報道などのPRを中心としたIMCマーケティング手法という対照的なスタートとなりました。
出前館
お笑い芸人のダウンタウン浜田雅功さんが、昭和初期の流行ソング「スーダラ節」の替え歌を歌うテレビCMを展開。広告予算の大半を、テレビCMに集中させて、短期間で知名度を一気に向上させる戦略が取られました。
Uber Eats
Uber Eatsのロゴが大きくプリントされた緑と黒の配達バッグを背負った若者が、自転車で街中をさっそうと走る姿が連日報道されました。強烈なPR効果を生み、出前のイメージをスタイリッシュに刷新。知らず知らずのうちに、街中の光景として自然に馴染んでいきました。
2. FLICKモデルによる比較(2025年12月時点)
競合ブランドの考察研究を目的に、統一指標として、FLICKモデル(フリックモデル)を使用して、出前館とUber Eatsの2つのブランドの施策を比較しました。

*OpenAIによるアングルシフトのFLICK分析(2025年12月)
3. 業績の比較
各ブランドの業績を比較しました。
出前館
・売上高:2025年8月期397億円(前年比-21.2%)
・収益性:営業損失49億円、7年連続赤字
・シェア:利用率36%前後で2位
マス広告に特化したことで、一気に知名度を向上させました。このため、広告としては成功しました。しかし、事業全体に目を向けると、その後のプロモーションを維持するためのコスト負担が大きく膨らみ、赤字が継続している状況が続いています。このため、「有名になれば必ずしも売れるわけではない」ことを示す典型的なケースとなりました。LINEを活用したり、地元のお店を応援したり、地道にファンを育てていますので、今後の展開に希望が持てます。
Uber Eats
・売上高:2024~2025年連続2桁成長
・収益性:日本事業黒字継続(グローバルでも高収益)
・シェア:利用率57%前後でトップを維持
コロナの影響で巣ごもり消費が広がったこと。さらに、サービスそのものが、若者をはじめ職を求める人々に、新たな雇用を創出するビジネスモデルであったことが重なり、強烈な追い風が起こりました。利用することで、若者の応援につながったりし、身内感覚(Kinship)の意識を味方につけながら新たな習慣が生まれました。Uber EatsをFLICKモデルで考察すると、FLICKの5つのステップをバランスよくまんべんなく進行させることで好結果が業績にも浮き彫りになりました。
4. まとめ
出前館は、テレビCMを大量投下するマスマーケティング手法を選んだことで、短期間に全国的な認知を獲得することができました。広告としては成功といえますが、事業に目を向けると、クーポンやキャンペーンによる継続的なコスト負担を伴い、利益率を圧迫する構造的な課題を生んでしまいました。しかし、全国で有名になったからこそ、その後の店舗契約が全国規模で進んだともいえますので、赤字だから失敗だったとは言えません。収益化の壁に直面し続ける形にはなりましたが、ここは判断が分かれるところだと思います。
一方、Uber Eatsは、アプリによる注文、お店の人ではない人による配達、チップなどこうした一連のサービスそのものが、新たな生活習慣として根付くかどうかが、勝負の分かれ目だったと思います。ところが、緑と黒のバッグを背負い自転車が走る姿は、街の光景として自然な形で根付き、すっかりあたりまえのものとなりました。広告に過度な依存をせず、ビジネスそのものが応援する人たちを巻き込み、Kinship(身内感覚)を育む形になりました。
全国で一気に広く知らせて大勢に使ってもらうマスマーケティング手法を選んだ出前館。一方で、都会を中心に、一部の人々に頻繁に利用してもらうIMCマーケティング手法を選んだUber Eats。今回、フードデリバリー市場における2強といわれるブランドを比較し、今後のブランド戦略のあり方を考える上で、大きく時代の転換点を示唆しているようにも感じられました。
2025年12月25日初稿
2026年1月7日更新

